オープンダイアローグでも活用できる「応答と質問のワーク」
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オープンダイアローグで活用できる 「応答と質問のワーク」
【時間の使い方】 合計100分
1・ガイダンス(お願いごと、目的、対話的場を作るためのご提案など)5分
2・自己紹介(今ここで呼ばれたい名前、今の心と体の状態、参加するにあたって心配なこと、この場に期待すること、最近の出来事などから お一人1分以内で)10分
3・グループワークの流れと質問内容、ポイントの説明 5分
4・グループワークのやり方の説明とデモンストレーション 15分
5・グループワークの実施 (17分×3回)合計55分
6・振り返り(お一人ずつ今日の感想)10分
【グループワークの目的】
今回のワークは、話し手の使った言葉を繰り返し、自然に応答を欠かさない傾聴をしたり、構造化されていない対話の流れの中で、話し手の言葉に寄り添いながら、様々な質問をしてみる場です。
お互いに場の安心をつくりながら、対話を通して、自分や周りに安心を感じることを目的におこなっております。
【参考にしているもの】
このワークは、「対話実践の基本要素」に記載されている、以下の文章を参考に、内容を改善しながら実施していく予定です。
~応答に関して~
『言葉を繰り返す実践は、自然に〈応答を欠かさない傾聴〉あるいは明確な指針のない傾聴へと至ります。…』
~質問に関して~
『オープンダイアローグでは、人間関係を対象とした質問に多くのバリエーションがあります。それらは、システマティックな質問方式、問題解決に焦点を当てた質問方式、ナラティブにまつわる質問方式、精神力動的な質問方式に則っています。…』
『それらを介入の技法化につながるような構造化された面接技法として、あるいはあらかじめ計画された一連の質問として尋ねるわけではありません。…』
引用:p15、P23 「オープンダイアローグにおける対話実践の基本要素-よき実践のための基準-」
【開始前のお願いごと】
1・お名前は今日ここで呼ばれたい名前にご変更下さい。
★名前の変更の仕方の案内が必要な場合
①パソコン:ZOOM画面上で、自分の映っている部分を右クリックすると「名前の変更」ができます。
②スマホ、タブレット:画面下の「参加者」から自分の名前をタップして「名前の変更」を選択してください。
2・ファシリテーターが説明している際は、画面を消して、音をミュートにしてリラックスしてお聴きください。
【お願いごと】
グループワーク内でお聴きになった話の内容は、この場に閉じて頂き、他言しないようにお願いします。
ご自身や他人に対する暴力的な発言は、聴き手の安全性を保つ上でお控え頂きますようお願いいたします。
【対話的に進めるご提案】
①「聴くことと話すことを明確に分けながら行う」ご提案
誰かが話している時は、その声に耳を傾け、同時に話さないような状況を作っていくのはいかがでしょうか。
②「時間の平等性」のご提案
自己紹介、話す時間など、お互いの話す時間が平等になることを意識しながらお話しいただくのはいかがでしょうか。
③「今この瞬間に身と心を置き、あまり解釈せずに、ただただ相手の話を関心を持って聴く」ご提案
④関心を持って話を聴いていることが相手に伝わるように、相手のペースに合わせて「うなずき」や「相づち」「表情でのリアクション」などを意識してみるのはいかがでしょうか。
⑤「参加者それぞれのとらえ方や気持ちが常に尊重される場になる」ご提案
自分の気持ちや価値観を「おぼんにのせる」ような言い方で伝えて、相手が受け入れるかどうかを選べるような形にするのはいかがでしょうか。例えば、iメッセージ、提案という言い方など。
例)「〇〇という気持ちが浮かんできました。〇〇という風に私は感じました。〇〇という印象を私は受けました。」「受け入れて頂けるかどうかはお任せしますが、〇〇してみるのがいいのではないかと私は思いました。など」
⑥答えのない不確かな状況を許容しながら、表出してしまったモノローグに耐えたり、沈黙を大切にしながら、対話を続けていくことを提案致します。
【グループワークの流れ】
・ステップ1~3の順番で、状況に合わせて、質問を選びながら進めてください。
・余裕のある方は、+α(プラスアルファ)の質問を状況に合わせてしてみて下さい。ここまでを14分以内で行います。
・最後に3分くらいで、オブザーバーの方から振り返りのチェックポイントの質問をお願いします。その際は、質問役の方は画面を消してリラックスしてお聴きください。 全体でお一人17分です。
・こちらのページを参考に質問をしてみて下さい。
【ステップ 1】~オープンな質問による声かけ~
Q:今日はどんなお話をしたいですか?
Q:今、ここでお話になりたいことはなんですか?
Q:この時間で何をお話しになりたいですか?
Q:どんなテーマについて話されますか?
Q:この場をどのように使いたいですか?
Q:この話し合いにはどんなことを期待されますか?
Q:この話し合いが終わった時に、どうなっているといいですか?
などからいくつかお選びください。
【ステップ2】~興味関心を示す応答(伝え返し)と質問~
① 伝え返しの応答 ※話し手自身の言葉をそのまま繰り返して伝え返す。
「〇〇〇〇」、「〇〇〇なのですね。」
②質問
Q:〇〇とおっしゃったことについて、もう少し聴いてみたいと思いました。
Q:〇〇と先ほどおっしゃったことが印象に残っています。そのことについてもう少し話を聞いてみたいと思いました。
Q:〇〇〇についてのお気持ちをもう少し聞いてみたくなりました。
Q:〇〇について、詳しく聴いてみたい気持ちになりました。
Q:〇〇とおっしゃった背景について、もう少し聞いてみたくなりました。
Q:この話をしようと思われた経緯を聴いてみたくなりました。
※〇〇の部分は、話し手の方が実際に言ったこと、使った言葉など。
※ここまでを 12 分以内で行ってください。
【+α の質問例】
Q:「今この場に○○さんがいたら、なんと言ったでしょうね」
Q:「そのことについては、ご家族の中でどのように決まるのですか」
Q:「その問題について、皆さんはどうなさってこられましたか」
Q:「(父以外の人に)***のとき、お父さんはどんな気持ちだったと思いますか」
Q:「もし問題が解決したとしたら、みなさんはどうなると思いますか」
Q:「そうなるためには、どうすれば良いと思いますか。仮定の話で」
Q:「この前のときもそうでしたか(この前の時はどうでしたか。その前のときは……)」
Q:「自分の言動が他の家族にどんな影響を与えていると思いますか」
※ODNJP 対話の実践ガイドラインp15 参照
【補足の質問例】
Q:重ねて、話してみたいことはありますか?
・どうぞ、続けてお話しください。
【ステップ3】~振り返りの質問~
Q:何かまだ話せていないことはありませんか?
Q:最後に、言葉を重ねたいことはありますか?
Q:話をしてみていかがでしたか?
などからお選びください。
※残り 2 分くらいの時間(12 分経過した際)
【振り返りのチェックポイント】
オブザーバーの方から、話し手の方に下記の質問をして、振り返りを行ってください。
3 分以内でお願いします。その際は、質問役の方は画面を消してリラックスしてお聴きください。
Q:話している間の安心感はいかがでしたか?
Q:応答や質問で、よかったことはどんなことでしたか?
Q:話し終わっての今の気分はいかがですか?
Q:なにか否定されたり、評価されたと感じたことはありましたか?
【ポイントのおさらい】
・質問をする役の方は、14分以内に、ステップ3までの質問が終わるように、時間配分を意識して頂くことを提案致します。
・質問の練習の場なので、話し手の方には、質問ができるスペースを作って頂きますようお願いします。※一方的に話して終わりにならないようにご注意下さい。
・質問役の方は質問をすることに意識を置いて頂き、いつのまにか、自分の意見やアドバイス、自分の経験談など話しているという状態は避けて頂くことをご提案致します。
・是非、間や沈黙を大切にしながら、ゆっくり対話を進めて頂くことをご提案致します。
【グループワークのやり方】
3人一組のグループに分かれて行います。
①話し手役、②質問する役、③オブザーバー役、を決めてください。あいうえお順で話す順番を決めることをご提案します。
17分づつで対話を行います。 ※必ず18分以内には交代をお願い致します。
役割交代で3回実施してください。3人目の方は、画面を消して、時間管理をお願い致します。チャットなどで、「あと7分くらいです。」「あと2分くらいです。」などとメッセージを送り、時間になったら画面をつけて「時間です。」とお伝えください。
※ご注意:55分後に強制的にグループは解散してしまいます。
※参加人数によっては、2名一組で実施致します。その場合は20分づつ(ステップ3までは17分で実施。)で実施します。
【振り返りの感想】
今日のこの場がどんな場だったかの振り返りを行います。順番に振り返りの感想をお聞きして終わりにしたいと思います。
また、グループワークの中で、否定された、評価されたなどの価値観の押し付けを感じた方は、そのお気持ちをこの場において頂くことをご提案いたします。
【準備して頂くもの】
・こちらの資料を手元にご用意頂けると参加しやすくなると思います。
・グループワークの際に、時間を計りますので、タイマー機能のあるものをご用意下さい。
※スマホでご参加の場合は、スマホ以外の時間を計れるものをご用意ください。
・リラックスして参加して頂きたいので、どうぞ飲み物や食べ物をご用意してご参加下さい!
【参考文献】
・「オープンダイアローグにおける対話実践の基本要素-よき実践のための基準-」(翻訳版及び原文) Mary Olson 博士(マサチューセッツ・メディカルスクール大学、アメリカ) Jaako Seikkula 博士(ユヴァスキュラ大学、フィンランド) Douglas Ziedonis 医学士 公衆衛生学修士(マサチューセッツ・メディカルスクール大学)2014年
・「オープンダイアローグ」ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル 訳)高木俊介、岡田愛 日本評論社 2016年
・「オープンダイアローグ対話実践のガイドライン 第一版」ODNJP版 2018年
・「開かれた対話と未来」ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル 監訳:斎藤環 医学書院 2019年
・「トム・アンデルセン会話哲学の軌跡」矢原隆行(著・訳)、トム・アンデルセン(著) 金剛出版 2022年